美しいもの、もっと美しいもの

美的理由についての前置き 快楽主義 エンゲージメント理論 共同体主義理論 ネットワーク理論 ✂ コメント 参照文献 美的価値についての議論は引き続きたいへん盛り上がっているが、次の事実は意外なほどに無視されている。すなわち、美しさや優美さは比較・ラ…

後期シブリーの美学

フランク・シブリー[Frank Sibley]の名前と結びつけられた仕事として、真っ先に思いつくのは「Aesthetic Concepts」(1959)と、その実質的な続編にあたる「Aesthetic and Nonaesthetic」(1965)だろう。前者は、美学者としてのキャリアの最初期に書かれた論文…

美的なものと芸術的なもの

1 美学は芸術の哲学なのか? 2 芸術抜きの美学? 3 美学抜きの芸術? 4 ビアズリー、ディッキー、シブリー 5 美的なものと芸術的なもの、その後 参考文献 1 美学は芸術の哲学なのか? 博士論文(80,000 words)をあらかた仕上げて予備審査に出したので、ゴキ…

どの活動がなにゆえ「芸術」なのか?

芸術哲学の(根幹とまでは言わずとも、)代表的なトピックのひとつは芸術の定義である。芸術とはなにか。どこのどれがなにゆえ芸術作品であり、その他のアイテムはなぜ芸術作品ではないのか。 分析美学における芸術の定義史は教科書[1][2]やStanford Encyclo…

美しいものは喜びに適合している?:美的価値についての適合態度分析

美的価値とはなんぞやをめぐる、最新の研究です。*1 「美しい」「崇高である」「パワフルである」といった美的価値については、しばしばそれによって引き起こされる反応の観点から説明されてきた。すなわち、美しかったり優美だったりして美的に良いものとは…

美的なこだわりを持つことの利点?

美的にオープンマインドであること 芸術鑑賞を含む美的実践においては、オープンマインドであることが大事だと言われがちだ。偏見を持ってより好みするのではなく、どんなものでも受け入れて楽しむだけの余裕と寛容さを持つこと。それが、美的生活を豊かに営…

論文出ました+賞とりました🏆|芸術カテゴリーに関する制度説

英語論文を書きました。イギリス美学会発行のオープンアクセスジャーナル『Debates in Aesthetics』18(1)に載っています。 アイデアはおおむね2021年5月に応用哲学会で発表した「駄作を愛でる/傑作を呪う」がベースですが、逆張り鑑賞の話はすっかり削り、…

ホラーとはなにか|ノエル・キャロル『ホラーの哲学』、ジャンル定義論、不気味論

ノエル・キャロル『ホラーの哲学』の邦訳が出版され、訳者の高田敦史さん(@at_akada_phi)より一冊ご恵贈いただきました。ありがとうございます。大好きな本がまたひとつ日本語で読めるようになったということでたいへんうれしいです。内容としてもキャッチー…

ジェロルド・レヴィンソンと芸術に関する文脈主義

ジェロルド・レヴィンソン[Jerrold Levinson]は現在メリーランド大学で卓越教授を務める美学研究者である。音楽の存在論における「指し示されたタイプ説」や、解釈と意図における「仮説意図主義」、芸術の意図的=歴史的定義など、さまざまなトピックにその後…

Make me feel goodなもの

いい気分だ 分かってんだぜ ──── I Got You (I Feel Good) - James Brown 先日の応用哲学会で、美的価値論に関わる発表をしてきた。 趣旨としてはこの文脈でモンロー・ビアズリーを読み直す、というものだったが、コメントの多くはその前提、既存の反快楽主…

グルーヴとはなにか

「グルーヴ[groove]」という音楽用語がある。ファンクやソウルを聞く人ならお馴染み、EWFの「Let's Groove」やFunkadelicの「One Nation Under A Groove」で歌われているアレや、JBの『In the Jungle Groove』やMaceo Parkerの『Life on Planet Groove』に掲…

面白かった映画選2021

今年は134本見た。ドラマもけっこう見たので、合わせて映像作品に触れていた時間はここ数年間でいちばん長いかもしれない。 Tumblr時代から毎年恒例の「面白かった映画選」も今回で8回目。大学に入ってから8年近く経ったということでもある。 以下、2021年の…

客観的な批評のひとつのやり方|ノエル・キャロル『批評について』

">ノエル・キャロル『批評について』は、分析美学の事実上のルーツであり、現在ではサブ分野とみなされている「批評の哲学[philosophy of criticism]」の優れた入門書である。 ">この本については、勉強したての頃にすでにレビューを書いたことがあるのだが…

ノエル・キャロル『芸術哲学』:目次とリーディングリスト

Carroll, Noel (1999). Philosophy of Art: A Contemporary Introduction. Routledge. 最近読んだ、ノエル・キャロル[Noël Carroll]による分析美学の教科書『Philosophy of Art: A Contemporary Introduction』(1999)が、入門としてかなりよさげだったので…

Liminal Spaceのなにが不気味なのか

リミナル・スペース[Liminal Space(s)]は2019年ごろに4chanからTwitterやReddit経由で広まった、インターネット・ミームである。Fandomの「Aesthetics Wiki」によれば、 Liminal Spaceの美学は、広くてなにもない、薄気味悪く不穏な雰囲気[eerie and unsettl…

美的に画一的な世界

1.ネハマスの悪夢 ネハマスの悪夢という、分析美学では有名な話がある。*1 もし美的判断が普遍的同意を要求するのであれば、理想的には、皆があらゆる正しい判断を受け入れるだろう。つまり、完璧な世界では、われわれはみなまったく同じ場所に美を見出すこ…

モンロー・ビアズリー「美的観点」(1970)を翻訳しました

モンロー・ビアズリーの「美的観点」という論文を翻訳しました。最新号のフィルカル6(2)に載っています。論文の中身や背景については訳者解説も付けているので、そちらをどうぞ。 20世紀分析美学の礎を築いた巨人を三人挙げるとすれば、ビアズリー、シブリー…

レジュメ|Andrea Sauchelli「機能美、知覚、美的判断」(2013)

Andrea Sauchelli「機能美、知覚、美的判断」(2013)のレジュメ|Sauchelli, Andrea (2013). Functional Beauty, Perception, and Aesthetic Judgements. British Journal of Aesthetics 53 (1):41-53.

レジュメ|ノエル・キャロル「メディウム・スペシフィシティ」(2019)

ノエル・キャロル「メディウム・スペシフィシティ」(2019)のレジュメ|Carroll, Noël (2019). Medium Specificity. In Noël Carroll, Laura T. Di Summa & Shawn Loht (eds.), The Palgrave Handbook of the Philosophy of Film and Motion Pictures. Spri…

哲学者は認知科学の論文を読むか?|描写の哲学の場合

描写の哲学はかなり学際的な分野だ。異なるバックグラウンドを持つ研究者たちが、画像という同一の主題を、さまざまなアプローチで扱っている。 2021年6月26日㈯に、松永さん(@zmzizm)主催の「描写の哲学研究会」があり、今年度は「描写の哲学と認知科学」が…

レジュメ|Enrico Terrone「正しさの基準と描写の存在論」

Enrico Terrone「正しさの基準と描写の存在論」のレジュメ|Terrone, Enrico (forthcoming). The Standard of Correctness and the Ontology of Depiction. American Philosophical Quarterly.

レジュメ|ベリズ・ガウト 「芸術を解釈する:パッチワーク理論」(1993)

ベリズ・ガウト 「芸術を解釈する:パッチワーク理論」(1993)のレジュメ|Gaut, Berys (1993). Interpreting the Arts: The Patchwork Theory. Journal of Aesthetics and Art Criticism, 51(4):597-609.

レジュメ|ノエル・キャロル「芸術鑑賞」(2016)

Carroll, Noël (2016). Art Appreciation. Journal of Aesthetic Education, 50(4):1-14. 美学者ノエル・キャロル[Noel Carroll]による、その名も「芸術鑑賞」という論文。キャロルの鑑賞・批評観が「芸術鑑賞ヒューリスティック」という概念のもとにミニマ…

発表「駄作を愛でる/傑作を呪う」|応用哲学会年次大会あとがき

2021年5月22日㈯の応用哲学会年次大会で発表してきました。発表スライドは以下です。 「駄作を愛でる/傑作を呪う」という題目で、分析美学の「批評の哲学」にカテゴライズされるだろう内容になっています。"だろう"というのは、実際にカテゴライズされるか…

レジュメ|キャサリン・エイベル「ジャンル、解釈、評価」(2015)

キャサリン・エイベル「ジャンル、解釈、評価」(2015)のレジュメ|Abell, Catharine. (2015). Genre, Interpretation and Evaluation. Proceedings of the Aristotelian Society, 115, New Series, 25-40.

「映画を倍速で見ることのなにがわるいのか」ROUND2

noteに「映画を倍速で見ることのなにがわるいのか」という記事を載せたら地味に伸びたうえ、森さん、松永さん、ネットユーザーの皆さんからそれぞれコメントを頂いたので、いくつか応答しておく。 1.「人それぞれ論法」「たとえ論法」はやめましょう noteで…

レジュメ|Moonyoung Song「美的説明の選択性」(2021)

Moonyoung Song「美的説明の選択性」(2021)のレジュメ|Song, Moonyoung (2021). The Selectivity of Aesthetic Explanation. Journal of Aesthetics and Art Criticism 79 (1):5-15.|広く認められているように、芸術作品が特定の非美的性質を持つことは…

レジュメ|Brian Laetz「ケンダル・ウォルトンの〈芸術のカテゴリー〉:批評的注釈」(2010)

Laetz, Brian (2010). Kendall Walton's 'Categories of Art': A Critical Commentary. British Journal of Aesthetics 50 (3):287-306. 久々にケンダル・ウォルトン「芸術のカテゴリー」を読み直し、「あれ、こんな立場だっけ」と気になる点があったので、…

レジュメ|モーリス・マンデルバウム「家族的類似と芸術に関する一般化」(1965)

モーリス・マンデルバウム「家族的類似と芸術に関する一般化」(1965)のレジュメ|Mandelbaum, Maurice. (1965). Family Resemblances and Generalization concerning the Arts. American Philosophical Quarterly, 2(3), 219-228.

レジュメ|モンロー・ビアズリー「批評的理由の一般性について」(1962)

モンロー・ビアズリー「批評的理由の一般性について」(1962)のレジュメ|Beardsley, Monroe C. (1962). On the Generality of Critical Reasons. The Journal of Philosophy, 59(18):477-486.