2021-01-01から1年間の記事一覧

客観的な批評のひとつのやり方|ノエル・キャロル『批評について』

">ノエル・キャロル『批評について』は、分析美学の事実上のルーツであり、現在ではサブ分野とみなされている「批評の哲学[philosophy of criticism]」の優れた入門書である。 ">この本については、勉強したての頃にすでにレビューを書いたことがあるのだが…

ノエル・キャロル『芸術哲学』:目次とリーディングリスト

Carroll, Noel (1999). Philosophy of Art: A Contemporary Introduction. Routledge. 最近読んだ、ノエル・キャロル[Noël Carroll]による分析美学の教科書『Philosophy of Art: A Contemporary Introduction』(1999)が、入門としてかなりよさげだったので…

Liminal Spaceのなにが不気味なのか

リミナル・スペース[Liminal Space(s)]は2019年ごろに4chanからTwitterやReddit経由で広まった、インターネット・ミームである。Fandomの「Aesthetics Wiki」によれば、 Liminal Spaceの美学は、広くてなにもない、薄気味悪く不穏な雰囲気[eerie and unsettl…

美的に画一的な世界

1.ネハマスの悪夢 ネハマスの悪夢という、分析美学では有名な話がある。*1 もし美的判断が普遍的同意を要求するのであれば、理想的には、皆があらゆる正しい判断を受け入れるだろう。つまり、完璧な世界では、われわれはみなまったく同じ場所に美を見出すこ…

モンロー・ビアズリー「美的観点」(1970)を翻訳しました

モンロー・ビアズリーの「美的観点」という論文を翻訳しました。最新号のフィルカル6(2)に載っています。論文の中身や背景については訳者解説も付けているので、そちらをどうぞ。 20世紀分析美学の礎を築いた巨人を三人挙げるとすれば、ビアズリー、シブリー…

レジュメ|Andrea Sauchelli「機能美、知覚、美的判断」(2013)

Andrea Sauchelli「機能美、知覚、美的判断」(2013)のレジュメ|Sauchelli, Andrea (2013). Functional Beauty, Perception, and Aesthetic Judgements. British Journal of Aesthetics 53 (1):41-53.

レジュメ|ノエル・キャロル「メディウム・スペシフィシティ」(2019)

ノエル・キャロル「メディウム・スペシフィシティ」(2019)のレジュメ|Carroll, Noël (2019). Medium Specificity. In Noël Carroll, Laura T. Di Summa & Shawn Loht (eds.), The Palgrave Handbook of the Philosophy of Film and Motion Pictures. Spri…

哲学者は認知科学の論文を読むか?|描写の哲学の場合

描写の哲学はかなり学際的な分野だ。異なるバックグラウンドを持つ研究者たちが、画像という同一の主題を、さまざまなアプローチで扱っている。 2021年6月26日㈯に、松永さん(@zmzizm)主催の「描写の哲学研究会」があり、今年度は「描写の哲学と認知科学」が…

レジュメ|Enrico Terrone「正しさの基準と描写の存在論」

Enrico Terrone「正しさの基準と描写の存在論」のレジュメ|Terrone, Enrico (forthcoming). The Standard of Correctness and the Ontology of Depiction. American Philosophical Quarterly.

レジュメ|ベリズ・ガウト 「芸術を解釈する:パッチワーク理論」(1993)

ベリズ・ガウト 「芸術を解釈する:パッチワーク理論」(1993)のレジュメ|Gaut, Berys (1993). Interpreting the Arts: The Patchwork Theory. Journal of Aesthetics and Art Criticism, 51(4):597-609.

レジュメ|ノエル・キャロル「芸術鑑賞」(2016)

Carroll, Noël (2016). Art Appreciation. Journal of Aesthetic Education, 50(4):1-14. 美学者ノエル・キャロル[Noel Carroll]による、その名も「芸術鑑賞」という論文。キャロルの鑑賞・批評観が「芸術鑑賞ヒューリスティック」という概念のもとにミニマ…

発表「駄作を愛でる/傑作を呪う」|応用哲学会年次大会あとがき

2021年5月22日㈯の応用哲学会年次大会で発表してきました。発表スライドは以下です。 「駄作を愛でる/傑作を呪う」という題目で、分析美学の「批評の哲学」にカテゴライズされるだろう内容になっています。"だろう"というのは、実際にカテゴライズされるか…

レジュメ|キャサリン・エイベル「ジャンル、解釈、評価」(2015)

キャサリン・エイベル「ジャンル、解釈、評価」(2015)のレジュメ|Abell, Catharine. (2015). Genre, Interpretation and Evaluation. Proceedings of the Aristotelian Society, 115, New Series, 25-40.

「映画を倍速で見ることのなにがわるいのか」ROUND2

noteに「映画を倍速で見ることのなにがわるいのか」という記事を載せたら地味に伸びたうえ、森さん、松永さん、ネットユーザーの皆さんからそれぞれコメントを頂いたので、いくつか応答しておく。 1.「人それぞれ論法」「たとえ論法」はやめましょう noteで…

レジュメ|Moonyoung Song「美的説明の選択性」(2021)

Moonyoung Song「美的説明の選択性」(2021)のレジュメ|Song, Moonyoung (2021). The Selectivity of Aesthetic Explanation. Journal of Aesthetics and Art Criticism 79 (1):5-15.|広く認められているように、芸術作品が特定の非美的性質を持つことは…

レジュメ|Brian Laetz「ケンダル・ウォルトンの〈芸術のカテゴリー〉:批評的注釈」(2010)

Laetz, Brian (2010). Kendall Walton's 'Categories of Art': A Critical Commentary. British Journal of Aesthetics 50 (3):287-306. 久々にケンダル・ウォルトン「芸術のカテゴリー」を読み直し、「あれ、こんな立場だっけ」と気になる点があったので、…

レジュメ|モーリス・マンデルバウム「家族的類似と芸術に関する一般化」(1965)

モーリス・マンデルバウム「家族的類似と芸術に関する一般化」(1965)のレジュメ|Mandelbaum, Maurice. (1965). Family Resemblances and Generalization concerning the Arts. American Philosophical Quarterly, 2(3), 219-228.

レジュメ|モンロー・ビアズリー「批評的理由の一般性について」(1962)

モンロー・ビアズリー「批評的理由の一般性について」(1962)のレジュメ|Beardsley, Monroe C. (1962). On the Generality of Critical Reasons. The Journal of Philosophy, 59(18):477-486.

面白かった映画選2020

あけましておめでとうございます。7年目の「面白かった映画選」です。 2020年は外出自粛で家にいる時間が長かったにもかかわらず、そんなに映画見ていません。反省も言い訳も昨年と変わらないので、全84作中、面白かった映画5本を紹介します。 アンジェイ・…