【📣お知らせ】『芸術をカテゴライズすることについて』の合評会をやります|5月23日(土)@上智大学

だいぶ直前でのお知らせですが、昨年末に慶應義塾大学出版会より刊行しました『芸術をカテゴライズすることについて:批評とジャンルの哲学』の合評会を、美学会東部会例会にてやっていただく運びとなりました。オーガナイザーは上智大学の青田麻未さんです。

  • いつ:2026年5月23日(土) 午後
  • どこ:上智大学(四谷キャンパス6号館4階403) or オンライン
  • なに:美術研究および美術家として活躍されている大岩雄典さんと小田原のどかさん、おなじみ分析美学の森功次さんをお招きし、件の本について語り合う学術イベントです。

Zoomリンクなどの詳細は美学会のホームページにありますので、ご確認ください。

オーディエンスからの質問に答える時間もとるつもりですので、どなたでもお気軽にご参加ください。美学会の会員でなくとも、あるいは専門家でなくとも大歓迎です(ホームページの記述が示唆するところに反し、非会員の方でもとくに参加申請は必要ないそうです)。

Zoomでの配信もありますので、よろしければそちらからでも。私もバンクーバーからオンラインでの参加となります。

 

当日の記録も、そのうち別媒体にまとめて公開予定です。ちょっと先になりますが、詳細はまたお知らせします。

哲学研究の道具箱

研究のために使っているもの・やっていることを紹介します。

PC|MacBook Air (M4)

日本にいたころはiMacをメイン端末にしていましたが、留学先ではほぼすべてをMacBook Airでやっています。去年、一時帰国したついでに新しく出たM4に新調しました(こっちで買うより安いので)。一番控えめなスペックにしましたが、すべてに関して満足しています。一日の大半の時間をこれの前に座って過ごしています。昨年末ごろに不注意でキーボードに水をかけてしまったときはこの世の終わりかと思いましたが、血眼ですぐさま救出し、念入りに干したおかげで、いまのところ異常はないです。

一応、サブ端末としてXiaomi Pad 6(+キーボードつきのカバー+スマートペン)を持っています。普段はデジタル時計を表示させていますが、原稿の校正など手書きでやったほうがスムーズな作業のときに使ったりします。軽いので、MacBookの代わりに出先のお供にすることもあります。

紙のノートはほぼ使いません。気分転換に触ることはありますが、別で管理するのが面倒なのと、頭で考えている速度にペンが追いつかないので、ワークフローには組み込んでいません。

  • おまけ①:Macのバックグラウンドサウンド機能でホワイトノイズなどの環境音を鳴らせるので、(とくに出先で)集中したいときにヘッドホンで聞いている。メニューバーにショートカットを置いて、ワンクリックで再生/停止できるようにしています。お気に入りは「雨」。
  • おまけ②:文章を書くときは、タイピングに合わせて音を鳴らすソフト(Tickeys)を走らせています。主に気分を高めるためですが、連打の回数が分かりやすいなど、ちょっとだけ実用性もあります。

ノート|Obsidian

読書ノートと、研究のアイデアノート・執筆中の原稿は、Obsidianで管理しています。ちょっと前までNotionでやっていたのですが、あれこれ新機能を押しつけてくる感じが嫌になったので引っ越しました。

新規作成のノートが入る「0 inbox」を起点に、読む関連のフォルダとして「1 reading」と、書く関連のフォルダとして「2 writing」があります。あとは役割を終えたノートを放り込んでおくための「3 archive」と、デイリーノートを入れている「daily」と、テンプレートや添付ファイルの保存先である「others」だけです。基本的にObsidianはフォルダをあまり増やさず、ノート管理にはプロパティを使うという方針です。

タグは「1 reading」と「2 writing」をまたいだ進捗管理に使っていて、「#次にやる🟥」「#連絡待ち🟦」「#いつかやる🟨」「#完了🟩」があります。よく確認する「#次にやる🟥」はBasesの表にまとめ、デイリーノートのテンプレートに組み込んでいます。

書く関連のノートは、tagsとは別のプロパティを設けて以下三種類に分類しています。

  • 「material🗂️」:なにかに使えそうなネタや、たまに確認する資料。「徳倫理学の主要な論者&重要文献リスト」みたいなメモをここに入れています。
  • 「idea💡」:そのうち論文にしたいアイデア。私は「箇条書きで全体の議論を組む→パラグラフに起こす」という流れで論文を書いているので、箇条書き段階のもの(アウトライン)がここに入ります。
  • 「draft✍」:日本語の文章としてまとまっている下書き。

ちょっと煩雑ですが、提出用の清書はWordでやっています。理由は、以下で紹介するPaperpileのアドオンで参照文献をつけたいからです(Obsidian上で使えるプラグイン、誰かはやく作ってくれ)。英語論文の場合は、日本語原稿が完成するまでObsidian上の「draft✍」として執筆し、英語に翻訳〜参照文献の追加はWordでやります。他人に見てもらいたい原稿の場合は、さらにGoogleドキュメントに移してリンクを送ったりします。メールでWordファイルを送ってもいいんですが、なんだかんだGoogleドキュメントがいちばんやりやすい気がしています。

文献管理|Paperpile

唯一の課金サービス。年間5,000円ちょい($35.88)で、多くの面倒から解放されます。類似のソフトはいくつか触ってみましたが、Paperpileが一番直感的にしっくりきたのと動作が軽いので使っています。

用途は、(1)保存している論文のデータベース、(2)参照文献の作成です。

(1)に関して、長年、電子図書館で落としたPDFに名前をつけてDropboxで手動整理していたのですが、PaperpileならGoogle Chromeの拡張機能からワンクリックで保存できるので快適です。メタデータはよしなにやってくれます。JAACやBJAといったよく読むジャーナルは、新刊が出たら興味あるなしにかかわらず、全部Paperpileに放り投げています。(博士修了後〜留学前の電子図書館が使えなかった時期は、これにだいぶ助けられました。)

(2)に関して。参照文献を手打ちするのはもうやめましょう。ChicagoやAPAのスタイルに準拠した完璧な参照文献を人力で作るのはまず無理ですし、労力として無駄です。Paperpileでも類似の文献管理ソフトでもなんでもいいので、機械に頼みましょう。指定したスタイルの一覧をさくっと出力できます。(邦語文献は人力でやるほかないですが。)

 

 

Paperpileの真骨頂はWordやGoogleドキュメントで使えるアドオンで、本文中の引用(in-text citation)をPaperpileのリンクで入力しておくと、勝手に参照文献一覧(Bibliography)を作ってくれます。入力も簡単で、ホットキーからPaperpileの検索欄を呼び出せるので、引きたい文献を指定してページ数などをポチポチ入れるだけです。

もちろん、引用する論文のメタデータをPaperpile上でしっかり管理していることが大前提です。URLやDOIを入れていれば、「U」のショートカットでウェブ上から調べてきてくれますが、たまに表記が変だったりページ数を間違っていることがあるので注意です。いずれにしても、目視での最終チェックは不可欠です。

ところで、Paperpileに追加したPDFファイルは、連携しているGoogle Drive上に保存されていきます。せいぜい数ギガなので、「Paperpile」フォルダを「オフラインで使用可」にしておくのがいいでしょう。ネットがないところでもデータベースにアクセスできます。(ファイル名は「Walton 1970 - Categories of Art.pdf」みたいな形式で統一してくれるので、検索ですぐに見つかります。)

note.com

もう少しテクい活用法としては、「Paperpile」フォルダのシンボリックリンクを作って、ObsidianのVaultに置いておく、というものがあります。これでPaperpileに(厳密にはGoogole Driveに)入っているPDFをObsidianのビューアーで開けるようになり、論文PDFを読みながら読書ノートをとるというのがObsidian上で完結します。Obsidianの方に「PDF++」のプラグインを入れておけば、PDFからノートにコピペで引用してきた箇所をPDF上にハイライトし、相互にリンクさせる、みたいなことができます。

 

 

上記のnoteではさらに、Paperpile上のPDFを一切合切テキスト認識させて、Obsidian側で全文検索できるようにするやり方が紹介されていますが、自分の場合はObsidianがめちゃくちゃ重くなったのでやめました。単語単位でなにか検索したい場合は、ブラウザの方のPaperpileに移って検索しています。

その他、Obsidianのプラグインとして「Folder notes」「Linter」「Outliner」「Smart Composer」などを愛用していますが、用途に合わせて足したり減らしたりすればいいかと思います。

AIツール|NotebookLM

近年のベストプロダクトです。

書く関連でも使いますが、主に読む関連で使います。一番よく使っているのは「レポート」内の「概要説明資料」というやつで、興味のある論文はまずぜんぶこれで読んでいます。結構精度が高くて、中心的な主張とその根拠はちゃんと拾ってきますし、適時表にまとめてくれますし、脱線的な話題は除外してくれるので、いいんじゃないでしょうか。プロンプトはデフォルトでもいいのですが、自分の好みに合わせて用意したものを使用しています(見出しを厳密に対応させるとか、関連文献の表を作ってもらうとか)。ちゃんと読む必要のある重要文献は本文も通読しますが、重要度の低い論文はこれで済ませています。このスタイルになってから、「なんとなく内容を知っている」論文が飛躍的に増えました。

同じトピックの論文を複数渡せば、各論者の主張の違いや、互いに対する批判ポイントをまとめてくれるので、分析哲学(「なんちゃら主義」とか「なんちゃら説」が大量に出てくる)をやっている身としては大助かりです。私は、新しく論文を書くことになったら新たにノートブックを作って、引くことになりそうな関連文献をまとめて渡しています。同じ哲学者の論文をいくつか投げて、立場がどう変化してきたのか質問する、とかもできます。「あの話しているところ、何ページだっけ?」みたいなのも聞けるので、地味に便利です。

at-akada.hatenablog.com

高田さんが紹介されている音声・動画解説もおもしろい&すごいのですが、ちょっと内容を簡略化しすぎなときがあるので、勉強用の出力はテキストをメインにしています。ちょっと前に追加されたスライドやインフォグラフィックは、楽しいですがあまり実用性はないという感想です。

こういったAIツールをどれだけ活用できるかは、分野にもよるとは思います。私がやっている類の現代哲学は、論旨が明確&ちゃんと構造化されている論文が多いので、AI的にも処理しやすいんだと思います。

ガチ勢によるAI活用法については竹下さんの記事を参照。

practical-ethics.hatenablog.jp

スライド|Googleスライド

学会発表で使うスライドは、Googleスライドで作っています。どうせ複雑なものにするつもりはないので、これで十分です。共有リンクをQRコードにしてスライド内に貼っておけば、その場で参加者ともシェアできます。

ちょっと前の発表で、スライドにImageFXで作成した画像を添付したのが結構好評でした。こういうのがAIでサクッとできるようになったのはとてもいいですね。

翻訳|DeepL Translate & Write

英語論文を書く上での、長年の相棒です。これがなかったころの研究生活にはもう戻れません。翻訳の精度に関しては必ずしも満足しているわけではないので、ほかのAI翻訳もチラチラ見ています。

博士論文を書いていたころまではGrammarlyに課金していましたが、DeepL Writeで事足りると感じて解約しました。Translateのほうで出力された訳文をWriteにコピペして直す、という流れでやっています。これで書いた英語論文は、分かりやすいと褒められたことはあっても、英語として不自然だと言われたことはないので、いいんじゃないでしょうか。

いつも言っていることですが、普段から英語論文を読んでいる哲学研究者にとって、英語論文を書いて投稿するハードルはそんなに高くないと思います。読めるということは、出力された訳文が自分の意図に沿っているかおおよそ判断できる、ということなので。みんなもぜひ挑戦しよう!

研究者情報|researchmap、PhilPeople

研究業績はぜんぶresearchmapに載せています。これに関しては言うことはないでしょう。誰しもアカウントを持ち、頻繁に更新していて然るべきサービスです。

英語圏の哲学に特化した類似サービスとしてはPhilPeopleがあります。論文のデータベースであるPhilPapersの姉妹サービスといった位置づけで、気になる研究者の最新情報はこれで追っています。片っ端からフォローしておけば、「Publications by people I'm following」のところに刊行予定の論文情報が随時流れてきます。現代哲学はそれほど属人的ではないとはいえ、トピックごとの「いつメン」をおおまかに把握し、フォローできているとかなり見通しがよくなります。

習慣

ポモドーロ・テクニック

25分作業して5分休憩、4セット(計2時間)ごとに長めの休憩、という仕事術です。FlowというタイマーソフトをMacのメニューバーに常駐させています。

私は過集中しがちなタイプなので、25分ごとに立ち上がってトイレに行くなり、ストレッチするなり、目を閉じるなりして生活習慣病を遠ざけています。長めの休憩は15分ということになっていますが、気にせず、次のサイクルに飛び込む心構えができるまで休みます。ノッているときは休憩を飛ばすこともしばしばですが、それでも最長4ポモに一回は長めの休憩をするようにしています。

note.com

心構えに関してはこちらの記事をたいへん参考にさせていただきました。

「やった量が数値化できる」という恩恵は本当に大きいですね。一日一日を有意義に過ごせたのか・人生がどこに向かっているのかさっぱり分からないという不安は、大学院生〜ポスドクにつきものです。目標ポモ数に到達したことは、その一日をその限りで正当化してくれますし、「今日は切り上げて映画でも見るか」という気持ちにさせてくれます。ちなみに私は一日8ポモを目標にしています。たったの4時間弱ですが、大事に使えば結構な量の仕事を片付けることができますし、それを超えてやった分を手軽に「えらい!」にすることができます。

上のnoteの方は「サボった量も数値化されてしまう」をデメリットとして挙げてますが、私はそれも含めて、自分の生産性が上振れているのか下振れているのか可視化できたほうが、メンタル的には助かりますね。ダメなときはダメだと割り切って過ごせますが、いまいちどれだけダメなのか・それが何日続いているのか分からない状態が一番ダメです。

GTD

研究だけでなく生活上の雑用も含めて、(なるべく)すべてをGoogle ToDo リストで管理しています。いわゆるGTD(Getting Things Done)をゆるめに取り入れていて、「次にやる」「近々やる」「連絡待ち」「いつかやる」に分類しています。

実践できている時期とそうでない時期がありますが、GTDとの付き合いは長く、大学受験生の頃からデビッド・アレンの本を読んではEvernoteにフローを組んで使ってました。持続可能な仕方でアレンジを加えていって、いまはかなりマイペースにやっています。タスク管理を外部ツールに投げて脳のリソースを解放する狙いが大きいです。

(なるべく)早寝早起き、適度な運動、食事バランス

Obsidianのデイリーノートにプロパティを書いて、その日のポモ数と合わせて記録しています。なるべく長生きしたいので。

 

本が出ました📣『芸術をカテゴライズすることについて』|方法論的な背景についての補足、Walton (2007)をもとに

芸術をカテゴライズすることについて──批評とジャンルの哲学』という本を書きました。慶應義塾大学出版会から本日発売です(Amazon)。いい本なので、買うといいと思います。

「はじめに」の一部は👇️で読めます。

各章概要は👇️に書いています。

 

宣伝を兼ねて、ケンダル・ウォルトン(Kendall Waltonの論文「Aesthetics: What? Why? And Wherefore?」(2007)を紹介します*1ウォルトンは、『芸術をカテゴライズすることについて』でも最重要人物として取り上げているアメリカの哲学者です。2004年のアメリ美学会会長就任講演をもとにした論文で、ウォルトンは美学という分野のあいまいなアイデンティティと、それを踏まえてどのようなアプローチをとるべきかについて語っています。自分の本の方法論的な背景について、いくらか補足してくれる内容だと思います。「美学ってなにをする学問なの?」という人にもおすすめ。

紹介の後に、『芸術をカテゴライズすることについて』との関連についてもいくらか述べます。

  • 1 中心的な問いの欠如
  • 2 概念分析 vs. 理論構築
  • 3 小さな理論 vs. 大きな理論
  • ✂『芸術をカテゴライズすることについて』における大きな理論

*1:Walton, Kendall. 2007. “Aesthetics-What? Why? And Wherefore?” Journal of Aesthetics and Art Criticism 65 (2): 147–61.

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