論文が出ました。きょうと視覚文化振興財団編集・発行の『美術フォーラム21』51号に載っています。
「「美的」って何?」と題した、the aestheticの特集号で、私の担当章では美的価値と美的快楽の関係をめぐる、近年の議論を紹介しています。美しいものは、快楽を与えるおかげで美しい気もするが、まずもって美しく、そのおかげで快楽を与えるような気もする。どっちなんだい、というのは古代から議論されているすごく古典的な問いです。
現代美学では、長らくデフォルトの理論であった美的快楽主義(喜ばしいからこそ美しい)が見直され、経験主義的現主義(美しいからこそ喜ばしい)を含むさまざまな代替案が模索されている最中です。とくにオーバーン大学の人たち(ジェームズ・シェリーとケレン・ゴロデイスキー)がやっていることについて日本語で読めるサーベイはなかなか貴重なんじゃないかな。*1
関連する文献をいくつか挙げておきます。
- 美的価値論については去年ビギナーズガイドを書いたので、まずはこちらをどうぞ。
- 2020年に森功次さんが『現代思想』に書かれたサーベイ論文「美的なものはなぜ美的に良いのか:美的価値をめぐる快楽主義とその敵」とは内容が一部かぶっています。私のほうでは取り上げなかったドミニク・マカイヴァー・ロペスの代替案について知りたい方は、こちらをどうぞ。
- 美的快楽主義については、Servaas Van der BergがPhilosophy Compassに「Aesthetic Hedonism and Its Critics」というサーベイ論文を書いているので、英語が読める方はそちらをどうぞ。私が挙げている以外にも美的快楽主義の難点を列挙していて、論敵になりたいときに便利です。
余談ですが、日本語で論文を出版するのは二年半ぶりというのに気づいてびっくりしています。博論本(日本語)も秋には出せるはずなので、ご期待ください。