面白かった映画選2017

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 あけましておめでとうございます。ぼくです。

 年に一度、観た映画の年間ベストをまとめようという本企画も今回で4回目。2017年は就活のせいでなかなか映画観れないなーと予想していましたが、いつの間にか就活を辞めていて、たくさん観れました。合計で136本です。

 では、はじめます。

観た順。ランキング形式ではない!
数字はFilmarksにてつけた点数。
*劇場公開が今年の作品も、古いものは「旧作」扱い。

[旧作]

  1. マグノリア』(1999) ☆5.0 /// 『ブギーナイツ』(1997) ☆5.0 /// 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007) ☆5.0 /// 『パンチドランク・ラブ』(2002) ☆4.9
  2. 『牯嶺街少年殺人事件』(1991) ☆5.0 /// 『台北ストーリー』(1985) ☆4.5
  3. 霧の中の風景』(1988) ☆4.6
  4. (審査員特別賞:『西瓜』(2005) ☆4.0)
  5. クラウド アトラス』(2012) ☆4.7
  6. 『タレンタイム〜優しい歌』(2009) ☆5.0
  7. ざくろの色』(1971) ☆4.7
  8. 『エル・スール』(1982) ☆4.7
  9. パイレーツ・ロック』(2009) ☆4.6
  10. 『炎628』(1985) ☆5.0

[新作]

たかが世界の終わり』☆4.0
『沈黙ーサイレンスー』☆4.0
ラ・ラ・ランド』☆2.5
『お嬢さん』☆4.7
『ムーンライト』☆3.5
『メッセージ』☆4.7
『オクジャ okja』☆4.2
『T2 トレインスポッティング』☆3.8
『パターソン』☆4.3
ベイビー・ドライバー』☆4.0
ダンケルク』☆3.8
『立ち去った女』☆4.9
スイス・アーミー・マン』☆3.9
『ドリーム』☆3.8
エンドレス・ポエトリー』☆4.3
オン・ザ・ミルキー・ロード』☆2.0






[旧作]


マグノリア』(1999) 
ブギーナイツ』(1997)
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)
パンチドランク・ラブ』(2002) 

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 しょっぱなからなんだこのふざけたセレクトは、と言われてもしかたがないでしょうよ。今年Filmarksで満点☆5.0を付けたのは6作ですが、50%に当たる3作がポール・トーマス・アンダーソン作品からのノミネートということで、世界の均衡が崩壊しています。

 「エンターテイナー・オブ・アメリカ」、「ポップ・カルチャーの救世主」、「現代のアンディ・ウォーホル」、とはぼくが勝手に呼んでいるのですが、PTAのカラフルさは他の追随を許さない。大抵の作品が長尺(マグは3時間、ブギとゼアは2時間半)にもかかわらず、最初から最後まで「おもしれえ……おもしれぇ……! おもしれぇよォ……!」と、アホみたいに面白がっていられる、このテンポの良さはアメリカの財産、映画界の福音に違いない。もう両手離しで、頭ごなしに褒めたくなる、そんなPTA映画。

 老若男女が入り混じってわちゃわちゃするマグノリアは文句なしに大傑作だし、デカマラ青年の成功と性交と挫折と中折を大真面目に描いたアホ映画ブギーナイツも捨てがたい。石油と閉鎖社会と宗教のドロッドロで窒息するようなゼア・ウィル・ビー・ブラッドも素晴らしい。だが、個人的にはパンチドランク・ラブが一番好きかも。「変わっている」というよりは、「ちょっと頭の弱い」バリーが、あっちへぶつかって、こっちへぶつかって……。本当に好きだ。アァ……。

 2017年12月に公開した新作『Phantom Thread』ですが、まだ配給決まってないのかな。仕事してくれ、頼む。




『牯嶺街少年殺人事件』(1991)
台北ストーリー』(1985)

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 「一番好きな映画監督は?」と聞かれたら、元気よく「エドワード・ヤン!」と答えるようになってから久しいですが、ついにやってきましたよ大本命、『牯嶺街少年殺人事件』リバイバル上映!! うぉぉぉお!! 事件だ事件だァ!!! 2017年は、これを観るために生きていたと言っても過言ではない。

 クーリンチェに対するぼくの偏愛は各所で垂れ流していて、皆さんうんざりしているかもしれませんが、改めて愛を語ります。こいつはとんでもない傑作です。

 60年代初頭の台北。マフィア並に組織化された中学生不良グループの抗争。暴行あり流血あり死人ありの、圧倒的世紀末。まさに台湾版『ゴッド・ファーザー』。悲しいぐらいピュアな男の子と、出会う男すべて狂わせるガール。これだけ動的な話にもかかわらず、台湾ニューシネマのスタイルで撮られる映像はあまりにもひっそりとしていて、白々しい。感情を煽るようなBGMは一切なく、カメラはどこまでも遠い。しかも、それが4時間ぶっ続け。生きるってのは、無音と向き合うことなんだ。『カラマーゾフの兄弟』には人生の全てが書かれているそうだが、クーリンチェはお世辞にも教訓的な映画ではない。はっきり言ってこんなの観ても、個人的な日々はなに一つ好転しない。だけど、この押し付けがましくない物語が、ぼくはひたすらに愛おしい。『カラマーゾフの兄弟』には人生の全てが書かれているそうだが、それだけじゃ足りないんだ。

 こんなマニアックな作品にも関わらず、ロングヒットになり、弐番館でも盛況を収めるなど、ようやく時代がエドワード・ヤンに追いついてきている。この衝撃は、家で借りてきたDVDを観るだけじゃ、半分も回収できないだろう。今年また上映するかどうか定かではないが、万が一あったら、みんな走るんだ。走れ、走れ、劇場へ走れ。

 ついでに(って言っちゃアレだけど)、ほぼ同時にやっていた『台北ストーリー』も、なかなかの佳作です。本当に悲しくて、やりきれない気持ちになる。リアルが”リアル”すぎて、なんも言えない。好きだぜ、エドワード・ヤン




霧の中の風景』(1988)

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 今年は、「映画」との出会いというよりも、「監督」との出会いに恵まれた一年だったように思います。なかでもイチオシが、ギリシャテオ・アンゲロプロス監督。このタルコフスキーへのリスペクトを隠そうともしない、難解・冗長・睡眠薬的作品を作りまくる頭のおかしい作家との遭遇は、今年もっとも刺激的な経験の一つだった。なんせ、『旅芸人の記録』(232分)、『霧の中の風景』(125分)、『こうのとり、たちずさんで』(142分)、『ユリシーズの瞳』(177分)、『永遠と一日』(134分)、『エレニの旅』(170分)、『エレニの帰郷』(127分)で、この監督だけで18時間と45分を捧げているので、無刺激だったと言えばおれはもう五感のない無機物よ。マグカップとか、観葉植物とか。

 一番心に刺さった作品は、霧の中の風景。これ、かなり観やすいというか、それほど長くもないし話もわかりやすいので、アンゲロプロス入門に最適だと思う。アンゲロプロス作品は、タルコフスキーの精神世界と小津安二郎の日常をゆるやかに繋げる。「曇天の日にしか撮影しない」という謎のこだわりによって、灰一色に統一された画面は、すんごい斬新で癖になる。なかなか知人で観ている人がいないので、語る相手がいなくて悲しいんだぼくは……。




審査員特別賞:

『西瓜』(2005) 

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 ここで番外編です。Filmarksはたいてい「好き嫌い」じゃなくて個人的に見た「完成度」で採点してるので、たまに「好きなんだけどなぁ〜!好きなんだけどなぁ〜!」といいつつ☆4.0ぐらいを付けてしまう作品がちらほら。

 しかし、「こんな快作を埋もれさせるのはもったいない!」ということで、急遽引っ張ってきた一作がこちら。快作というよりは、怪作です。

 改めて多く語るつもりはないので、ぼくのFilmarksレビューを御覧ください。あと、よかったら観てやってください、『西瓜』。

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https://filmarks.com/movies/29946/reviews/34515103


 現場からは以上です。




クラウド アトラス』(2012)

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 しばらく忘れていたが、「そうか、俺SF映画好きだったわ」というのを思い出した作品。『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹ですね。6つの異なる時代(1849年、1936年、1973年、2012年、2144年、2321年)を舞台にしたオムニバス。壮大です。長いです。ドタバタします。

 全体論的な因果のもとで、輪廻転生を繰り返す人びと。散らばった話が、繋がったかと思えばまたちぎれて、どこまでも広がっていく。予算規模がすごいです。あと、ペ・ドゥナが可愛い。




『タレンタイム〜優しい歌』(2009)

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 あ、なんか思い出しただけで泣けてきた。

 ヒューマンドラマの大傑作といえば、ぼくの中ではしばらく『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』が断トツ首位を走っていたのですが、ついに追いつかれました。マレーシアのヤスミン・アフマド監督。日本で紹介されるのは初かな。

 4月に都内の某読書会で教えてもらった作品ですが、いやァ、良かった。文化祭の歌唱コンクールと、生徒それぞれが抱えるドラマ。Filmarksでは「『シング・ストリート』と『6才のボクが、大人になるまで。』を持ってきて、『ヤンヤン 夏の想い出』に落とし込んだ」と書きましたが、この”お菓子詰め合わせ”感は本当にすごい。それでいてビターなのだから、大した作品だ。

 基本的に映画観ていて泣いたことはないんですが、これは、ついに泣きました。渋谷イメージフォーラムの、夜遅くの回で、一番うしろの席で、ぼろぼろ泣いてました。ラストにかけての、あの展開はずるい。あまりにも”エモ”すぎる。なにより、劇中歌が本当に良い。必見度合いで言うと、クーリンチェにも匹敵する、素晴らしい名作です。もう一度観たい……。




ざくろの色』(1971)

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 早稲田松竹の二本立てで観たセルゲイ・パラジャーノフ監督特集。

 世の中にはいくつか「振り切れてクレイジー」な作品があって、例えばゴダール『ウィークエンド』ホドロフスキーホーリー・マウンテン寺山修司田園に死すなんかが思いつくが、本作ざくろの色』は間違いなくこの類。

 筋は有るようで無くて、動いているようで静止していて、喋っているようで何もかもが無音に包まれている。唐突に始まって、唐突に終わる。「さぁ、死ね」。コレを観おわって帰ったあと、あまりにも消化不良で胃もたれになったので、酒をあおって寝ました。観るドラッグ、とは言い得て妙だ。苦痛に感じるほどの長さでもない(71分)なので、みんなもっと気軽に観てほしい。

「そういえば、あるよ」
 1000がだしぬけに言った。そして本棚からおもむろに『ざくろの色』のVHSを出したのだ。
「観たことない?」
「あるわけないでしょ」
「ちょっとやってみる?」
「本物?」
「もちろん」





『エル・スール』(1982)

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 はい、スペインのヴィクトル・エリセ監督です。修行僧みたいにストイックで寡作な監督さん。

 80年代のいわゆる”Slow Cinema”勢とは一線を画す、独自のリアリズムを追求した作家だと思います。エリセ映画は決して”巧み”なものではなく、想像力で空を飛ぶ鳥というよりは、よちよち歩きの幼児みたいで、不器用だからこそ愛おしい。『エル・スール』で描かれる親子のすれ違いは、あまりにも普遍的で、逃げ場がない。こんなどうしようもない物語をすくい取るのは、すごく誠実な態度だと思うし、優しさなんだと思う。しんみりとしちゃうけど、本当に優しい映画なので、心の荒んだ悪人にも観てほしい。




パイレーツ・ロック』(2009)

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 PTA以外、割としんみり系が並んでしまっているので、ここで一つ明るいヤツを。ラブ・アクチュアリーリチャード・カーティス監督ですね。

 60年代イギリス、まだラジオでロック・ミュージックを放送するのが規制されていた時代。「海上から勝手に流そうぜ!」ということで、本当にそれをやってしまった人たちの半実話。一癖も二癖もあるラジオパーソナリティーたちと、60年代ロックの名曲たち……。「毎日が文化祭」みたいで、本当に楽しそう。この男子校的なノリも含めて、どちらかというと男子向けな話なのかもしれない。ロックは正義なのよ。




『炎628』(1985)

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 旧作最後のノミネートはソ連より戦争映画『炎628』。この凄惨さについては、いまだに言葉にできずにいる。

 ナチスの横暴を描いた作品は多く存在するが、「おい!酷いぞ!」と憤慨するものこそあれ、本作みたいに「あっ……ああァ……!」と言葉を失う類のものはそうそう無いのでは。映画に関する表象文化論ではたびたび「表象不可能性」が問題に上がりますが、これもまた、物語る=再現することの本質的不可能性を痛感させられるような作品です。ここまで鬼気迫る狂気は、ちょっと見たことない。

 レンタルビデオ屋には置いておらず、「幻の名作」と化していますが、みなさんDVD買ってください。ぼくは買いました。これから先、何度観返すことになるのか分からない。暗い気持ちになるのであまり観たくないが、ここにあるのは紛れもない”歴史”であって、『炎628』はどこまでも歴史に誠実な作品だ。ぼくはそんな風に思うが、あるいは全くの逆で、抑えきれない怒りが作り出した偏狭的な作品のようにも観れる。いずれにせよ、”こんなもん”は観たことない。Filmarksの平均評価が☆4.4ってあたりに、「震えて眠れ」って感じだ。






[新作]


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 今年はずいぶん映画館に行った印象です。あと、映画館でアルバイトしていました。チケットを売ったり切ったりしていると自分も観たくなってきますし、回りにも映画好きが増えたことでいい刺激になったんじゃないかと。

 何より、マーティン・スコセッシグザヴィエ・ドランパク・チャヌクジム・ジャームッシュクリストファー・ノーランエミール・クストリッツァアレハンドロ・ホドロフスキーアキ・カウリスマキの新作が上映ということで、もはや”激アツ”なんて騒ぎではない。もうこれはカーニヴァルよ。作家性のカーニヴァル

 今年は本数多めなので、あっさりまとめようと思います。お納めください。


たかが世界の終わり
 みんなだいすきドランかんとくの最新作。周囲を含めて笑えるぐらい酷評されてましたが、ぼくは好きです。初期ドランの良さなんて、まさにこれなんじゃないか。みんな『Mommy』と『わたしはロランス』しか観てないんだろ。

『沈黙ーサイレンスー』
 遠藤周作。この堂々巡りの議論は正直退屈だが、信徒がこっぴどく殺されまくるのは、一周回って見ものというか、レパートリーが抱負すぎて感心した。まぁ、対して面白くはない。

ラ・ラ・ランド
 ミュージカル嫌い代表ことボクが満を持してのラ、ラ、ランド上陸。粗探しするためだけにIMAXに課金。十分すぎるほど悪口言ったので、もう大丈夫です。『セッション』にすら見劣りする三流映画。こんな作品をありがたがる人たちって、関取が一人で餅つきをする映像を延々と2時間見せられても「おもろいおもろい」言ってそう。

『お嬢さん』
 これはたまらん。本当に面白かった。韓国のサスペンスものはなんだかんだグロいだけで、気分が悪くなって終わりのパターンが多いため、あまり好きではないんですが、そこはさすがのパク・チャヌク。なんでこんなに笑えるんだ。天才。

『ムーンライト』
 ララランドを抑えてのアカデミー賞作品賞を受賞。の割に、ここまでシンプル”つまらん”のはどういうことか。ウォン・カーウァイrespectなのは分かったから、もう一声欲しいところだった。

『メッセージ』
 SF映画では今年のベスト。あのテッド・チャン原作なんだから、面白くないわけがない。宇宙、生命、時間、言語……このおそろしく”地味”な哲学的思弁が、人によっては無理なんだろうが、ぼくにはばっちりフィットした。

『オクジャ okja』
 近年台頭してきたNetflixが満を持して送る韓国映画。このためだけにNetflixに登録し、まんまと課金し続けています。思っていたほど胸糞ではないし、カバっぽい質感のオクジャは可愛いけど、話は並だ。

『T2 トレインスポッティング
 
トレインスポッティング自体なんの思い入れもないため、始終どうでもよかった。回りの人たちは「音楽がイイぃぃいい!!」とか叫んでイッてましたが、ゆうてそんなじゃね?

『パターソン』
 ゆるい映画2017年代表。「ありふれた平凡な生活」を謳ってますが、こいつら、めちゃくちゃ恵まれてる方じゃねーか!リア充◯ね!ってのは置いといて、やっぱり気持ちよかった。ブルドッグのマーヴィンは大正義。

ベイビー・ドライバー
 よく出来てるんだろうが、あまりにも期待未満でブチ切れた。あれはちょっと大人げなかったと思う……。
 いや、やっぱ凡作だよこれ。

ダンケルク
 予告の段階でうすうす想像はできたが、まぁ、地味な映画です。とはいえ、個人的にはやっぱ正義だし、「大義であった……」って感じさ。ありがとう『ダンケルク』。

『立ち去った女』
 ちょっと異色の新作。イメージフォーラムでひっそりやっていたフィリピン映画ですが、10時間の映画とか作ってる鬼畜鬼才ラヴ・ディアスの、超短い(4時間)作品。おもろいですが、もう二度と観れない気がしてならない。何を観たんだろうか? 本当に観たんだろうか? 全部まぼろし

スイス・アーミー・マン
 ハリー・ポッターが放屁しまくる映画。思っていたほどアホじゃなかったし、ちょっと怖かった。わけわからんが、なんか好き。

『ドリーム』
 アメリカ地域文化やってる界隈で盛り上がってた作品ですが、うーん、まぁ普通かな。実話ベースだから、こんなもんか。

エンドレス・ポエトリー
 世界代表のサイコ、ホドロフスキー超監督の新作。前作『リアリティのダンス』もばつぐんに面白かったですが、軽く超えました。ジジィの野望は終わらない。

オン・ザ・ミルキー・ロード
 最後の最後、愚痴で終わらせて下さい。『ベイビー・ドライバー』以上の「ガッカリ of the year」は間違いなくコレ。ドタバタしてるだけで、もうまるでダメ。2017年の楽しい映画経験を台無しにするレベルの駄作。ぼくは悲しいヨ。


 終わった……。今年も長かったし、例年長くなってる気がする……。

 映画関連でほかに印象に残っている出来事と言えば、東京フィルメックス映画祭ですかね。ワン・ビン監督の新作『ファンさん』と、アッバス・キアロスタミ監督の『24フレーム』を観に行きましたが、どちらも微妙。特に後者は吐血レベルのつまらなさで、面白くなさすぎて面白かったです。イベントとしてはすごく新鮮で楽しかったですね。オールナイト上映には一度も行けなかったので、今年は数回行きたいところ。

 あと、上でもちらっと触れましたが、映画館でバイトしてました。本当に入り浸っていたんで、ホーム感がすごい。いま映画館行っても、「あっ、チケット売り場に椅子があるんだ。いいなぁ……」とか、「あのドリンク、作るのダルそうだな〜」とか、「ゴミ置いてくんじゃねぇよ、掃除大変だろうが!」みたいなところばっかり気になってしまう。


 タイミングが合わず観られなかった作品もちらほら。アキ・カウリスマキ希望のかなたと、ブレードランナー 2049スター・ウォーズの新作なんかは、早めに観ておきたい。

 監督単位では、アレクサンドル・ソクーロフアレクセイ・ゲルマンロベール・ブレッソンヴェルナー・ヘルツォークをまとめてチェックしたいですね。まだまだ頑張ります。

 まもなく院試なので、映画沼への復帰は2月中旬頃〜を予定しています。無事に院生になれたら、狂ったように映画を観る予定なので、乞うご期待。

 ぼくのFilmarksはこちらです

 いい年になりますように。

面白かった映画選2016

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あけましておめでとうございます。今年も頑張って書いていきましょうー。

面白かった映画選! 始まるよ!

第三回となる2016年度は、一人暮らしを始めたこともあり、色んな意味で生活環境が変わった一年でした。

マジで映画を観る暇もないような時期もありましたが、12月のラストスパートで18本観て、今年は合計で104本という結果です。年間100本も観てないやつの映画レビューなんて興味ないですもんね、頑張りました。


では、行きます。

観た順。ランキング形式ではない!

数字はFilmarksにてつけた点数。

[旧作]

  1. ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン! (2007) ☆5.0
  2. 黒猫・白猫 (1998) ☆5.0
  3. ミステリー・トレイン (1989) ☆5.0 /// ナイト・オン・ザ・プラネット (1991) ☆5.0
  4. アモーレス・ペロス (1999) ☆4.8
  5. 田園に死す (1974) ☆4.7
  6. 地獄でなぜ悪い (2013) ☆4.8
  7. あやつり糸の世界 (1973) ☆5.0
  8. インヒアレント・ヴァイス (2014) ☆4.6
  9. ヤンヤン 夏の思い出 (2000) ☆4.8
  10. セント・オブ・ウーマン / 夢の香り (1992) ☆5.0
  11. フォロウィング (1998) ☆5.0
  12. 復讐者に憐れみを (2002) ☆4.8

[新作]

オデッセイ ☆3.9
ヘイトフル・エイト ☆4.5
リリーのすべて ☆3.0
ルーム ☆4.0
デッドプール ☆4.1
レヴェナント:蘇りし者 ☆3.2
シン・ゴジラ ☆4.3
リップヴァンウィンクルの花嫁 ☆4.3
この世界の片隅に ☆4.1
シング・ストリート 未来へのうた ☆4.2





[旧作]


とにかく楽しい映画が観たい!あなたに

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン! (2007)

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たぶん今年観たなかで一番頭の悪い映画

キャストも監督もほぼ同じ作品としてショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)がありますが、こちらはどうも好きではなく……。本作はその完全上位互換です。面白さは保証します。

コメディとしての楽しさは言うまでもなく、サスペンスあり、アクションありの、最高のエンターテイメント作品。「これ、つまらないって言う人いないだろ……」ってぐらい面白さに圧倒されたのは『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997)以来です。映画初心者から見逃しちゃってる上級者まで、自信を持ってオススメできる一作。




HAPPY ENDなドタバタ喜劇が好きなあなたに

黒猫・白猫 (1998)

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アンダーグラウンド』(1995)を生んだユーゴスラビアの鬼才エミール・クストリッツァ監督によるスラップスティック・コメディ。

ガヤガヤしている映画が好きです。色んな食材を突っ込んだ闇鍋みたいに、次の展開が読めない、いい意味で狂ってる映画が好き。本作は『アンダーグラウンド』からマジック・リアリズム的要素を引き継ぎ、なおかつポップに仕上げた傑作です。

人生はクソだけど、素晴らしい。そう思わせてくれる素敵な作品。[HAPPY END]のテロップにシビレます。Filmarksオフ会で友人たちにも観せましたが、軒並み高評価でした。『アンダーグラウンド』より圧倒的に観やすい作品なので、是非。




スタイリッシュでクールな映像にシビレたいあなたに

ミステリー・トレイン (1989)
ナイト・オン・ザ・プラネット (1991)

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ジム・ジャームッシュ作品ということでまとめて紹介します。一人の監督に☆5.0を複数付けたのは、たぶんジム・ジャームッシュ監督だけ。

どちらもオムニバス形式で描かれる都会の人間模様。普通の人たちの普通の暮らしが、笑いあり涙ありで描かれます。生きるってのは、それだけでドラマなんだなと思わせてくれる2作です。「エモい」という言葉が本当によく似合う。

インディー感あふれる映画が好きな人にはまちがいない監督です。パルプ・フィクション好きも気にいるはず。




やっぱ犬派だろ!!なあなたに

アモーレス・ペロス (1999)

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『バードマン〜』(2014)『レヴェナント〜』(2015)で最近ブイブイ言わせているメキシコの監督、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの初監督作品です。とりあえず監督の名前を覚えるのは無理だ、諦めた。

タイトルはスペイン語「犬のような愛」

同時に進行する3つの話。悲劇的な場面も多いですが、切なさとともに温かみも感じられる良い映画です。あとワンちゃんがいっぱいでてきます。最高。




狂気のなんたるかを目の当たりにしたいあなたに

田園に死す (1974)

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日本を代表するサイコ野郎名詩人・寺山修司が産み落とした「観る麻薬」。

世の中には「何の説明なく、受け入れるしか無い」物事がたくさんありますが、その一つが田園に死すです。正気の日常を解体して、ぐちゃぐちゃに切り貼りしたようなグロテスクなオブジェ。どこまでも神経を逆撫でする展開は、もう拍手に値するレベルです。観ちゃいけないものを観ている感、触られてはならない部分を触られている感が尋常じゃない。

アングラつながりでホドロフスキー好きは間違いないし、サブカル男女はもれなく観ておくべきド名作です。日本が世界に誇るべきジャパニーズ・マッドネス。




星野源リア充っぷりを観てイライラしたいあなたに

地獄でなぜ悪い (2013)

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園子温作品では一番気に入りました、地獄でなぜ悪い。後半、明らかにキル・ビルを意識した怒涛の展開は必見です。

逃げるは恥だが役に立つの大ヒットは言うまでもなく、今年は星野源が幅を利かせていましたね! 歌って踊れて演技までできる男は美味しいなぁオイ!

ガッキーといちゃこらする3年前から、二階堂ふみと〇〇したり〇〇したりしてます。美味しいなぁオイ! なんか腹たってきた。




幻のSF映画が気になるあなたに

あやつり糸の世界 (1973)

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幻のSF映画、初の劇場公開、前半後半あわせて212分という、なにかといわくつきだった『あやつり糸の世界』。渋谷はユーロスペースで観てきました。

流石に宣伝過剰な面は否めませんが、それを補って余りある名作。これを掘り出してきたのはGJと言わざるをえない。運がよかったら今頃2001年宇宙の旅』『惑星ソラリスと並んでてもおかしくないレベルです。

ただ、カメラワークを始めとする演出がところどころダサいので、観る人を選びます。ぼくなんかはあのダサさが逆にSF的で大好きだけど……。




70年代アメリカのポップカルチャーが好きなあなたに

インヒアレント・ヴァイス (2014)

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今年はRadiohead待望の新作『A Moon Shaped Pool』が発表されましたね。(名盤です)

そんなRadioheadのMVを担当し、メンバー(とくにジョニー)ともイチャイチャしているポール・トーマス・アンダーソン監督。トマス・ピンチョンの『LAヴァイス』を原作とした探偵小説”風”の映画。さぞ難解かと思いきや、そうでもないです。

それこそRadioheadの『Kid A』や『Amnesiac』あたりの世界観に通ずるものがあり、実験的な中にちゃんとしたポップが宿っています。夏の夜にビールでも飲みながらヘラヘラ観てたい映画。




ささやかな日常に感動したいあなたに

ヤンヤン 夏の思い出 (2000)

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『恐怖分子』(1986)エドワード・ヤン監督の遺作。今年はK’s cinemaの台湾巨匠傑作選2016にて侯孝賢らと共に取り上げられ、ほんのちょっと話題になりました。

こちらも普通の家族の暮らしを淡々と描いた作品。『恐怖分子』と通ずるのは、全体に漂う「諦観」の空気感でしょうか。悲しい日には、もう悲しむしかない、って感じです。長い映画ですが、『恐怖分子』と同じくエドワード・ヤンの「間」が好きな人にはたまらない作品です。作中の3人のなかでは、父親の話が一番好きでした。

来年は、幻の作品『牯嶺街少年殺人事件』(1991)がデジタル・リマスターされ劇場公開となります。配給会社が倒産したとかなんとかで長らくVHSでしか出回ってなく、劇場公開は25年ぶりだそうです。3時間56分というギャグレベルの長丁場ですが、来年楽しみなイベントの一つです。




頑固おやじのアル・パチーノと旅行に行きたいあなたに

セント・オブ・ウーマン / 夢の香り (1992)

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今年最高のヒューマンドラマです。

アル・パチーノ演じる盲目の退役軍人と、アルバイトにやってきた苦学生がニューヨークであれこれする話。とにかくアル・パチーノ、名演です。目が見えないのにめちゃくちゃ高圧的な元軍人役がハマりすぎてて……それだけで観る価値アリの名作です。

ボーイ・ミーツ・ガールならぬボーイ・ミーツ・オッサンの映画にハズレはない、ってのがぼくの持論ですが、これは間違いないです。グラン・トリノしかり最強のふたりしかり。ヒューマンドラマで泣くことはほぼないですが、このラストにはウルっときました。もっとたくさんの人に観て欲しい傑作です。




見知らぬ他人を尾行して、なんかヤバいことに巻き込まれたいあなたに

フォロウィング (1998)

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みんなだいすきクリストファー・ノーランの初監督作品、『フォロウィング』です。

メメント』(2000)に比べると完成度で劣る、という指摘はよく聞きますが、いかんせん『メメント』が傑作すぎるので、ちょっと劣るぐらいで『フォロウィング』も傑作であることに変わりない。時系列をぐちゃぐちゃにして、分かったつもりの鑑賞者を二重三重と騙していくストーリーに惹き込まれます。話練るのにどれだけ時間かけてるんだろう。この脚本書いた人、絶対に頭いいでしょ、ってびっくりする。

来年は新作ダンケルクが公開されるとのことで、相変わらず頑張ってます、クリストファー・ノーラン。個人的にはこの『フォロウィング』や『メメント』みたいなミステリー映画がまた観たいのですが、なかなか作ってくれませんね。




娘の仇をめちゃくちゃにぶっ殺してやりたいあなたに

復讐者に憐れみを (2002)

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最後に取り上げるのが心苦しいほど過激な映画。オールド・ボーイ』(2003)のトラウマ再来です、パク・チャヌク監督。

監督お得意の復讐劇ということでそもそも不気味な映画ですが、聾唖の主人公という異常な設定が、さらに不気味さを加速させます。心臓が弱い方はまずダメでしょう。観る側を精神的に不快にさせる演出がこれでもかと続きます。

同じアジア人なので、グロさもえげつなさもリアルに伝わってくる、ってのは絶対あると思います。韓国映画恐るべし。もう韓国語聞くだけで怖いレベルです。

あと、主人公の恋人役ペ・ドゥナが可愛いです。ビビります。可愛さの暴力かよ。






[新作]


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今年も面白い映画がたくさん公開されましたね。『ズートピア』は観てないです。

去年、『セッション』から『マッド・マックス〜』、『スター・ウォーズ〜』まで、洋画が快進撃を続けていた印象がありますが、今年は逆に邦画がアツかったと思います。『君の名は』は観てません。

ぱっと思いつくだけでも『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』『聲の形』あたりはツイッターを中心にだいぶ盛り上がっていましたね。『君の名は』は観ていない。

話題作を雑にまとめてみました。『ズートピア』と『君の名は』はありません。


オデッセイマット・デイモンが火星で一人ダッシュ島をする話。そんなに面白くない。

ヘイトフル・エイトタランティーノ監督待望の新作。期待を裏切らないイカしたサスペンス映画です。ファンは必見。

リリーのすべて:劣化版『わたしはロランス』。苦悩のレベルが低い。そんなに面白くない。

ルーム:監禁されてるのに和気あいあいとしてる親子の話。評価が難しい。

デッドプール:去年で言うところの『キングスマン』枠。よくまとまった良質なアクション。

レヴェナント:蘇りし者大自然をバックに蘇ったディカプリオが這う&這う&這う。別に面白くない。

シン・ゴジラ:個人的に今年の劇場公開邦画ではベスト。人に話したくなる&何度も観たくなる、というジェットコースター的楽しさはまさに去年の『マッド・マックス』枠。

リップヴァンウィンクルの花嫁ユーロスペースあたりが吐血する勢いで宣伝していた「ミニシアター系」邦画。岩井俊二に思い入れはありませんが、よくできた話です。オススメ。

この世界の片隅に:2016年アニメ映画のダークホース。ほぼ口コミだけでここまで人気になったのは、やはり映画のポテンシャルか。よくまとまった良作ですが、個人的には原作のほうが好きです。

シング・ストリート 未来へのうた:高校生がバンドやるだけの話。ストーリーは地味ですが、作中歌がどれも最高なので、音楽映画としては白眉の出来です。




いかがでしたか?

取り上げてはいないけど、今年思い出に残ってる監督の一人に、フィンランドアキ・カウリスマキがいます。全体的に尺が短くて、個人的な評価としては☆4.0前後のちょっとした話ばっかり作ってくれる可愛い監督です。作家性の極み、みたいな作品ばかりで、だれがどう観てもアキ・カウリスマキでしかない、みたいな映像はたまに見たくなります。寒い季節はとくに、ね。

イベント単位で記憶に残っているのは、新文芸坐園子温・オールナイト(3月)とシュヴァンクマイエル・オールナイト(5月)、あとK’s cinemaゴダールリバイバル上映(6月/7月)ですね。


2016年、残念ながらグザヴィエ・ドラン監督の新作『たかが世界の終り』は間に合わなかったようで、2017年に公開となりましたね。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作エンドレス・ポエトリーも楽しみです。

スター・ウォーズの新作もまだ観てないので、近いうちにチェックしておきたいな。またしばらくバタバタしそうなので、早いところ腰を落ち着かせて映画を観れるようにするのが当面の目標です。

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いい年になりますように。