面白かった映画選2020

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あけましておめでとうございます。7年目の「面白かった映画選」です。

2020年は外出自粛で家にいる時間が長かったにもかかわらず、そんなに映画見ていません。反省も言い訳も昨年と変わらないので、全84作中、面白かった映画5本を紹介します。

 

アンジェイ・ズラウスキー『ポゼッション』(1981)★5.0

本年度のマイベスト。2020年は『ポゼッション』に始まり、『ポゼッション』に終わってしまった。初見満点★5.0は2018年度のホーリー・モーターズぶり。

ディスコミュニケーションのホラーという、僕のもっとも好きな主題をもっとも好きな仕方で描き出した、怪物級の作品。『恐怖分子』的な男女トラブル(「どこの夫婦にもよくあること」)から、シュヴァンクマイエル、クローネンバーグ、ファスビンダーの闇鍋になり、激痛と絶叫で幕を引く。今年リバイバルされ、新文芸坐の二本立てでも抱き合わせになっていた『アングスト/不安』も悪趣味なポルノを連想させるが、見ちゃいけないものを見せられている感は『ポゼッション』に敵わない。それは、前者がある種の超越的な異常さを描いているのに対し、後者にはどこまでも普遍的なドラマを描いているがゆえの不気味さがあるからだろう。不気味さは、日常と地続きのところにある。

『シルバー・グローブ/銀の惑星』もそうだが、ズラウスキーの想像力は常軌を逸していてほんとうに怖い。法で取り締まりたくなる気持ちも分かる。

 

ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』(2019)★4.5/『母なる証明』(2009)★4.5

韓国映画の面白さがついに日の目を見た年だった。ポン・ジュノパク・チャヌクキム・ギドクも、シネフィル界隈ではおもろいおもろい言われてきたが、『パラサイト』のアカデミー賞受賞はひとつの節目となるだろう。

『パラサイト』はだいぶ面白い。『ポゼッション』もそうだが、ワンアイデアをグルーヴィに反復させる映画がかなり好き。『パラサイト』は「貧富の格差」というワンアイデアをあの手この手で描き、執拗なまでにあぶり出す。おそらくもっとも象徴的だったのは、雨のなか絶壁の階段を駆け“下りる”場面で、あそこに映画の主題が詰まっていた。ふつう、象徴が雄弁すぎるとうんざりするのだが、『パラサイト』には四の五の言わせない熱量としつこさがある。

同監督の母なる証明もはじめて見たが、個人的には『パラサイト』を上回る傑作だった。こちらで反復されるのは「息子を溺愛する母親」で、よりパーソナルだがよりえげつないモチーフだ。ある種のステレオタイプはへらへら笑って済む場合もあるが、ポン・ジュノは笑い事じゃないレベルにまで煮詰める。

そういえば、青い服着た女の人が変な動きする、っていうのは『ポゼッション』と一緒だな。なんで青なんだろ。

ほかに見た韓国映画にも佳作がたくさん。『タクシー運転手』はきれいにまとまったドラマだったし、ユーロスペースで見た『はちどり』もパンチの効いたデビュー作だった。なにより、今後もどんどん面白いものが出てきそうだという雰囲気があっていい。

  

ジョージ・A・ロメロ死霊のえじき』(1985)★4.7

前年度に引き続き、熱心にホラー映画を見ている。

古いゾンビ映画は、エレメントごとの引用可能性で見てるようなところがあるが、ロメロの『死霊のえじき』はその点まさに完璧な映画だった。壁から突き出てくる大量の腕、マッドサイエンティストとゾンビの友情、脳筋軍人の独裁、粘土のように引きちぎられる身体、リフトで納品されてくるゾンビ集団、血みどろ肉フェスで大団円……この手の映画においてみたいものを全部見せてくれる。

パンデミックという危機的状況と、それを凌ぐ人間のアホさ、という話題もタイムリー。

 

黒沢清『CURE キュア』(1997) ★4.6

最後も怖い映画。邦画はあまり見ない方だが、2020年は黒川清に入門できたのでよかった。

巨大な暗闇が中心に据えられ、その周囲が次から次へとおかしなことになっていく構造は、系統は違うが一昨年度の『ヴェルクマイスター・ハーモニー』にも通ずる。不条理は解明されなければ解明されないほどイケているので、『CURE』は抜群にイケている。ほんのりとカルトとスピリチュアルが漂う空気感には、2000年前後らしさがある。

あと、大和ハウスのCMを含め、役所広司がひどい目に合う映像がだいぶ好きなので、そこも評価ポイント。

あとあと、このチラシはすごくかわいい。

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その他、思い出

  • 『テネット』に備えて見返したインセプションインターステラーがばか面白くて引いた。肝心の『テネット』はイマイチで残念。 
  • 齢25にしてエヴァンゲリオンを履修した。小さい頃からインターネットスラムで繰り返し目にしてきたミームたちの元ネタをようやく知った。『破』がいちばん好き。
  • 『デッド・ドント・ダイ』といい『マティアス&マキシム』といい、シネフィル好みの監督らの新作がのきなみしょうもないが、『ミッドサマー』のしょうもなさには勝てない。 

 

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