あけましておめでとうございます。
5年目の「面白かった映画選」です。
2018年は115本観ました。
10月以降は研究が楽しくて、3ヶ月で10本しか観ていないという舐めプをかましています。2018年は新作もあまりチェックしていないので、ミニマルなリストになります。
例年通りランク順ではなく、観た順です。
いきます。
- 『スモーク』(1995)★4.7
- 『ウェディング・バンケット』(1993)★4.8
- 『お早う』(1959)★4.6
- 『ファニーとアレクサンデル』(1982)★5.0
- 『シルバー・グローブ/銀の惑星』(1987)★4.6
- 『万引き家族』(2018)★4.6
- 『男たちの挽歌』(1985)★4.7、『男たちの挽歌Ⅱ』(1987)★4.9
- 『ホーリー・モーターズ』(2012)★5.0
- 『ラルジャン』(1983)★4.9
- 『マリア・ブラウンの結婚』(1979)★4.7
『スモーク』(1995)★4.7
チルい映画オブ・ザ・イヤー。
ポール・オースター原作。ゆるーい人間模様。
語りのテンション感がすごく小説的で、文学好きにはたまらない。
カメラが重要なモチーフであるだけでなく、質感もどこかフィルムライク。35mmの粒子が浮いた感じ。タバコが吸いたくなる。
『ウェディング・バンケット』(1993)★4.8
スラップスティック・オブ・ザ・イヤー
2018年出会ってよかった監督の一人、アン・リー。『恋人たちの食卓』(1994)もいい感じ。
小津リスペクトを隠そうともしないストーリーテリングに、乾杯。ドタバタして、笑えて、最後はちょっとほっこり。食後の満足度が高い。
それと、講義の課題で扱ったので、クリップをめちゃくちゃ観た。さすがにその場面だけは飽きた。
『お早う』(1959)★4.6
ぼのぼのオブ・ザ・イヤー。
小津リスペクトなアン・リーの後に小津なわけなんですが、やっぱOZUはイケてる。
丹精なコンポジションと、小気味よいテンポ感。彼の作品はだいたい好きですが、『お早う』が一番好きになりました。弟の子がクール。
なんてことない日常が一番フォトジェニックですね。
『ファニーとアレクサンデル』(1982)★5.0
壮大オブ・ザ・イヤー。
5時間。ドカーン!
『アンダーグラウンド』や『旅芸人の記録』のような歴史的クロニクルと比べると、本作は長大ながらも個人的、プライベートな叙事詩。小さな世界の物語。
タルコフスキーやアンゲロプロスといった、70年代の刺客に対するベルイマンの応答。 『仮面/ペルソナ』(1967)、『叫びとささやき』(1972)といったキレッキレの挑戦作に比べると、話は全然ややこしくなくて、かなり観やすい。ダメ男とメンヘラがわんさか出てくる、ファンタジックな昼ドラ。
僕はDVDでちまちま観ましたが、2018年は劇場でもやっていましたね。まぁ長いので、自宅でちまちま観るほうがおすすめです。
『シルバー・グローブ/銀の惑星』(1987)★4.6
頭おかCオブ・ザ・イヤー。
悪夢のような創世記。異星人、カルト宗教、近親相姦、鳥人族……。それから、わけのわからない形而上学的マシンガントークを散りばめた、空前絶後の奇作。狂気の欲張りセット。
TSUTAYAの発掘良品は、たまにマジでいいものを発掘してくれるわけだが、2018年度の大収穫がこちら。
ジャンプカットの連続。挙句の果てに、フィルム紛失で監督がアフレコ解説。この熱量は、観たものにしかわからない……。
『万引き家族』(2018)★4.6
人間劇オブ・ザ・イヤー。
劇場公開の新作から、唯一のランクイン。パルム・ドールの名に恥じぬ、パワフルな作品。
ジャパニーズ・ホームドラマの極致。邦画史の一ページに刻まれる作品を、リアルタイムで観れて光栄だ。
「普通である」ことの暴力を暴露する、「普通じゃない」家族。「嘘の上にも有益な宗教は築ける」と言ったのはカート・ヴォネガット。
松岡茉優がえらい可愛い。
『男たちの挽歌』(1985)★4.7、『男たちの挽歌Ⅱ』(1987)★4.9
アホ映画オブ・ザ・イヤー。
香港アクションの大本命。出てくるヤツが大抵アホです。
絶叫、爆発、二丁拳銃、と怒涛のテンションでお送りするギャング映画。なにもかもが大げさでいちいち笑ってしまう。
無印ですでにぶっ飛ぶほど笑えるのに、Ⅱはあごが外れるほど面白いです。
それから、80年代のダサかっこよさいたるところにあるのも加点ポイント。コテコテのBGMと、テクノカット、オーバーサイズのジャケット。最高かよ。
『ホーリー・モーターズ』(2012)★5.0
難解オブ・ザ・イヤー。
『銀の惑星』に続く、頭おかC枠。あちらが動物的な狂気だとすれば、こちらは人間的な狂気。抑制された、静かな前衛。
カメラが不可視になった世界。演じることと、生きることの脱構築。
表象文化論の学徒としては、このポストモダン的世界観に垂涎を禁じ得ない。どれか一つ!と言うなら、年間ベストはこれかなぁ。
ジャムセッションでうまいフレーズを弾いた人に対して上がる歓声、あれがひっきりなしに上がってしまうような作品です。
『ラルジャン』(1983)★4.9
スタイリッシュ・オブ・ザ・イヤー。
ようやく観れた、ロベール・ブレッソン。 2018年の大発見は、駒場の10号館で映画観れることですね。
アキ・カウリスマキが大好きなので、ブレッソンが嫌いなわけがない。
多用される手や小物のカット。即物的で決定論的な世界観には、個人的にすごくシンパシーを感じてしまう。悲惨なのに、居心地の良い世界。
『やさしい女』(1969)、『白夜』(1971)など、まだ観れていない作品がいくつかあるが、全部観てしまうのがもったいなく思えるほどの監督。
『マリア・ブラウンの結婚』(1979)★4.7
壮絶な人生オブ・ザ・イヤー。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーも、2018年にたくさん観た監督の一人。
一見するとシリアスな人間ドラマだが、細部に狂気じみた演出を織り交ぜているせいで、コミカルな印象すら残る奇妙な作品。ファスビンダーもまた、鬼才の名にふさわしい監督の一人だろう。
ドイツ映画はこのマットな質感が好き。コントラストが低い感じで、目に優しい。画面の柔らかさと、内容の重さが、これまたよい塩梅。
2019年もたくさん観るぞ
例年通り、笑いあり恐怖ありの幅広いランキングになった印象。
選外だけど、アピチャッポン・ウィーラセタクン作品(『光りの墓』、『世紀の光』)も思い出に残った映画体験の一つ。
今年は修論もありますが、時間みつけてたくさん観れるといいですね。劇場にも、なるべく行きましょう。
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いい年になりますように!