「#magicrealism」のレシピ:「分裂」と「統合」の力学

「マジックリアリズム(Magic realism)」あるいは「魔術的リアリズム」と呼ばれる創作手法がある。マジックリアリズムとは、ラテンアメリカ文学を中心に、芸術批評で用いられる概念である。本記事では、この概念を整理、改良した上で、試験的に運用する。や…

Jiri Benovsky "Photographic Representation and Depiction of Temporal Extension"(2012)

「画像表象とリアリズム」第4回。前回、番外編で扱ったものに続き、イジー・ベノヴスキー(Jiri Benovsky)の論文です。本論文(Benovsky 2012)はPhilPaperの「Photography」カテゴリで、ウォルトン「透明な画像」(1984)に次ぐダウンロード数を記録している。…

「即興の哲学」:Aili Bresnahan "Improvisation in the Arts"(2015)

「分析美学におまかせ!」シリーズ(いま考えた)、今回は「即興(improvisation)」です。ノープランで、とっさに何かをやる技法。とりわけ音楽において用いられることの多い「即興」だが、古典的な音楽哲学ではいまいち扱いにくい、というのが今回のポイント…

「写真」の存在論的身分を巡って:Jiri Benovsky "What photographs are (and what they are not)"(2011)

普段やっている「画像表象とリアリズム」とはやや毛色の違う論文をご紹介。 名前の読みはイジー・ベノヴスキーですかね。2011年の論文、"What photographs are (and what they are not)"です。 今回読んできたのは、写真はいかなる存在論的カテゴリーに属す…

Barbara E. Savedoff "Escaping Reality: Digital Imagery and the Resources of Photography"(1997)

デジタル写真に関する議論で、よく引かれているサヴドフ論文(1997)。 「デジタル画像編集技術の普及によって、写真一般の信憑性が下がっちゃうぞ!」というのが大筋。 とりわけ、芸術写真における写真表現にフォーカスしている。アンリ・カルティエ=ブレッ…

面白かった映画選2018

あけましておめでとうございます。 5年目の「面白かった映画選」です。 2018年は115本観ました。 10月以降は研究が楽しくて、3ヶ月で10本しか観ていないという舐めプをかましています。2018年は新作もあまりチェックしていないので、ミニマルなリストになり…

レジュメ|ケンダル・ウォルトン「透明な画像」(1984)

写真論の研究ノート、第二弾。 今回は初心に返って、ケンダル・ウォルトンの「透明な画像」(1984)を読み直しました。 Walton, Kendall L. (1984). Transparent Pictures: On the Nature of Photographic Realism. Critical Inquiry 11 (2):246-277. 分析美学…

Vapormemeとジャンクの美学:もう一つの(悪趣味な)Vaporwave史

蒸気波の歴史について ポスト・モダニズム ジャンル純粋性の夢 Vapormemeとは何か ①ありがちなイメージやエフェクトをテキトーに貼り合わせただけのもの ②過去のVaporwave作品を、パロディ化したもの ③Vaporwaveと一切関係ない画像/音源で、#vaporwaveを名乗…

Geert Gooskens "The Digital Challenge - Photographic Realism Revisited"(2011)

「画像表象とリアリズム」Episode 1です。 指導教官とのゼミで描写(depiction)関連の論文を読むようになったので、そのまとめノートをブログに綴っておこうかと。 主に、デジタル時代の画像文化に関するものが中心です。 今日、紹介するのはGeert Gooskensに…

歌声で聞き分けるTWICEメンバー:パート割りの分析を手がかりに【2019/08/11更新】

皆さん、TWICEは聞いていますか。 僕は大好きです。 ということで、今日は「なにがなんでも、TWICEメンバーを歌声だけで聞き分けたい」という企画です。なにがなんでも聞き分けるぞ。 先行研究です。 声どころか顔も見分けられない??? というのではお話に…

Playlist:「ファンク・ギターの50年」1965-2018

James Brown「Papa's Got a Brand New Bag」(1965) Jimmy Nolen James Brown「Cold Sweat」(1967) Jimmy Nolan James Brown「I Got the Feelin’」(1968) Catfish Collins James Brown「Ain't It Funky Now」(1970) Catfish Collins James Brown「Super Bad」…

ファンク・ギターの50年:人物、歴史、スタイル

ファンク・ギターとはなにか。 僕は学部生のころ、ブラック・ミュージックを専門に演奏するサークルに所属していた。 ファンク・ギタリストとして4年間活動し、改めて思うことがある。 「ファンク・ギターってなんだ?」 折しも分析哲学という「言葉遣いや概…

分析時空論のスヽメ:四次元主義vs三次元主義

今回お勉強してきたのは時間と空間の哲学。 まさに形而上学の超王道。時間、空間、世界、その中で生きる我々とはどのような存在者なのか、考える。哲学勉強したてのころからずっと興味のあった分野です。 普段はこういうゴリゴリの形而上学ではなく分析美学…

Vaporwave A to Z:蒸気波仮想世界地図―――Vaporwaveサブジャンルまとめ

夏休みの自由研究、第2弾! Vaporwaveのサブジャンルについてまとめました。 このジャンルの分岐はちょっと常軌(蒸気)を逸していて、なかなか手に負えないのが実情。 ジャンル分けについてはこちらを参考にしています。(以下GAM) また、Vaporwaveのヴィ…

「Vaporwave主要リリース」カタログ化計画:近年の動向まとめ

夏ですね! みなさん、Vaporwave聞いてますか!?!?!? さて、今日の話題はVaporwave。 意外にもオバケウェブ初のVaporwave記事。 今回はVaporwaveのカタログを作ろうという企画。 はじめに重要なことですが、研究用の資料なので今はまだ公開できません。…

音楽作品の存在論まとめ:レヴィンソンvsドッド

ヘッダー画像は5分で作った。 さて、本日の話題は音楽作品の存在論。「音楽作品って、どういう特徴を持っているの?」「音楽作品の身分って、なんぞや」みたいな疑問に答えていく分野。 芸術作品の存在論をやっている人たちは、だいたい音楽作品を主題に扱っ…

芸術作品の「最適」な解釈を求めて:ジェロルド・レヴィンソン「仮想意図主義」について

『分析美学基本論文集』、飛ばし飛ばしですが読み進めています。今回は第3章「作品の意味と解釈」からアメリカの哲学者Jerrold Levinsonによる「文学における意図と解釈」のメモです。出典は1996年の『The pleasures of aesthetics』に収録された論文「Inten…

ヴァーチャルな喜怒哀楽を生きる:ケンダル・ウォルトン「フィクションを怖がる」について

『分析美学基本論文集』からつまみ読み。ケンダル・ウォルトンによる1978年の論考「フィクションを怖がる(Fearing Fictions)」に関するメモと雑感です。ホラー映画に対して「怖かった」と言うけれども、それって本当に「恐怖」だと言えるのか?って話。①恐怖…

Book Review:ノエル・キャロル『批評について──芸術批評の哲学』

分析美学のフィールドで話題になっている新刊。(新刊といっても発売は去年の11月。読書ペースを上げねば……) 分析哲学の論文を思わせるクリアな議論から、「批評とはなにか」を考える。キャロルは一貫して「理由にもとづいた価値付け」こそが批評行為であると…

面白かった映画選2017

あけましておめでとうございます。ぼくです。 年に一度、観た映画の年間ベストをまとめようという本企画も今回で4回目。2017年は就活のせいでなかなか映画観れないなーと予想していましたが、いつの間にか就活を辞めていて、たくさん観れました。合計で136本…

面白かった映画選2016

あけましておめでとうございます。今年も頑張って書いていきましょうー。面白かった映画選! 始まるよ!第三回となる2016年度は、一人暮らしを始めたこともあり、色んな意味で生活環境が変わった一年でした。マジで映画を観る暇もないような時期もありました…

面白かった映画選2015

面白かった映画選2014

明けましておめでとうございます、羊年2015年。 ぼんやりしてたら雪が降ってきました、粒がでかい。 今年の抱負がまだ決まっていません、どうしよう。 さて、昨日集計したら2014年は合計で約70本(TSUTAYA:37,映画館:13,その他:20)映画を観てました。大学生…