グルーヴとはなにか

「グルーヴ[groove]」という音楽用語がある。ファンクやソウルを聞く人ならお馴染み、EWFの「Let's Groove」やFunkadelicの「One Nation Under A Groove」で歌われているアレや、JBの『In the Jungle Groove』やMaceo Parkerの『Life on Planet Groove』に掲げられているアレのことだ。

ヒップホップでサンプリングするためにdigられる、あまり知られていないファンクやソウルのレコードなんかはレア・グルーヴ[Rare groove]とも呼ばれる。スウィング[swing]と並んで、ジャズ発の用語らしいが、ブラックミュージックに限らず、ロックやパンクの楽曲・演奏に対しても使われる用語だ。

グルーヴとはなにか。無難な前提として、グルーヴとは音楽作品(楽曲、演奏、録音)の持つ特定の性質である。問題は、グルーヴィーな音楽とはどういう音楽なのかだ。

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面白かった映画選2021

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今年は134本見た。ドラマもけっこう見たので、合わせて映像作品に触れていた時間はここ数年間でいちばん長いかもしれない。

Tumblr時代から毎年恒例の「面白かった映画選」も今回で8回目。大学に入ってから8年近く経ったということでもある。

以下、2021年の面白かった7作品をご紹介。

 

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客観的な批評のひとつのやり方|ノエル・キャロル『批評について』

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ノエル・キャロル『批評について』は、分析美学の事実上のルーツであり、現在ではサブ分野とみなされている「批評の哲学[philosophy of criticism]」の優れた入門書である。

この本については、勉強したての頃にすでにレビューを書いたことがあるのだが、いま読むとかなり不満が多いため、改めてちゃんと書いてみたい。

とりあえず、本書におけるキャロルの主張の構造をまとめよう。キャロルの言っていることはかなりすっきりしているのだが、本の単位だとなかなか全体像が見えないかもしれない。逆に、議論の大筋さえ掴めれば、細部でなんの話をしているのかもすっきり理解しやすい。

  • キャロルの主張の構造
    • 【主張1】批評とは、作品に対する理由づけられた評価である。
    • 【主張2】理由づけられた評価は、客観的なものになりうる。
    • 【主張3】客観的な理由づけられた評価とは、作品作者の客観的な目的と達成を踏まえた評価である。
    • 【主張4】作品の客観的な目的は、作品の客観的なカテゴリーによって知りうる。
    • 【主張5】作品の客観的なカテゴリーは、客観的な諸要因(構造、文脈、意図)によって知りうる。
  • 客観的な批評の手順
  • ✂ コメント
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