レジュメ|Andrea Sauchelli「機能美、知覚、美的判断」(2013)

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Sauchelli, Andrea (2013). Functional Beauty, Perception, and Aesthetic Judgements. British Journal of Aesthetics, 53(1):41-53.

 

「機能美[functional beauty]」についての論文*1。意外と紹介されていないトピックですが、デザインや日用品の美学まわりは気になっている人多そう。

図らずもウォルトンのカテゴリー論や認知的侵入について気になっていたことにも関わる話題でお得でした。

*1:著者アンドレア・ソーチェリ[Andrea Sauchelli]は香港嶺南大学哲学科のAssociate Professorで、同学科の学科長をされている。もともと形而上学の人っぽいが、虚構的対象、芸術と倫理、ホラーの論文なんかも書いている。嶺南大学は分析美学の拠点としてはけっこうすごくて、Paisley LivingstonとRafael De Clercqがいるし、ちょっと前はMikael Petterssonがいた。

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レジュメ|ノエル・キャロル「メディウム・スペシフィシティ」(2019)

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Carroll, Noël (2019). Medium Specificity. In Noël Carroll, Laura T. Di Summa & Shawn Loht (eds.), The Palgrave Handbook of the Philosophy of Film and Motion Pictures. Springer. 29-47.

 

ノエル・キャロルの有名な仕事を挙げるなら、そのひとつはメディウム・スペシフィシティ[Medium specificity]の批判だろう。「絵画とは/写真とは/映画とは/etc. こういう性質をそれ独自の本質とするものであり、これを活かした作品こそが当のメディアの作品としてよいものだ」といった主張は芸術史上なんどもなされてきた。キャロルはこれらを攻撃する。

わりと最近書かれた本論文でも、新旧のメディスペ論者が叩かれ、メディスペなし批評が推されている。以下、かんたんなレジュメ。

 

  •  0.イントロダクション
  • 1.メディウム・スペシフィシティとはなんだったのか?
  • 2.メディウム・スペシフィシティへの回帰
  • 3.評価の問題
  • ✂ コメント
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哲学者は認知科学の論文を読むか?|描写の哲学の場合

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描写の哲学はかなり学際的な分野だ。異なるバックグラウンドを持つ研究者たちが、画像という同一の主題を、さまざまなアプローチで扱っている。

2021年6月26日㈯に、松永さん(@zmzizm)主催の「描写の哲学研究会」があり、今年度は「描写の哲学と認知科学がテーマになっている。もう事前申し込みは締め切っているので宣伝としてはいまさらなのだが、会に先立ちこの話題に関して自分が気になっている点を整理しておきたい。

まずはHPに挙げられている「想定される論点」を引用しよう。

  • 描写の哲学の議論は、心理学や神経科学といった認知科学からどう見えているのか。
  • 哲学者は経験的な研究ぬきに特定の前提を置きがちだが、それは適切なのか。
  • 認知科学者と哲学者の関心の違いは(もしあるとすれば)どこにあるのか
  • 描写の哲学で共有されている諸概念は、認知科学にとって何らかの意義を持つのか。
(2021年度 描写の哲学研究会 - 描写の哲学研究会)

描写の哲学のこれまでとこれからを知っていないと、こういった論点が想定されるのもピンとこないかもしれない。順を追って説明しよう。

 

  • 1.描写の哲学のこれまでとこれから
  • 2.進撃の認知科学
  • 3.哲学者の役割:問題提起モデル?
    • 参考文献
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