Davies, Stephen (2006). Authors' Intentions, Literary Interpretation, and Literary Value. British Journal of Aesthetics 46 (3):223-247. [PDF]
スティーヴン・デイヴィスによるBJAの論文「作者の意図、文学の解釈、文学の価値」のまとめです。*1
「作者の意図と文学解釈」というホット・トピックにおいて、「価値最大化説」を定式化した重要論文です。同様の立場はそれ以前のDavies (1982)でも提唱されているが、その後出てきた諸ライバル理論を踏まえて書かれたのが本論文。この手の話題で参照されないことはない程度には定番の一本です。
〜〜ここまでのあらすじ〜〜
ウィムザット&ビアズリー(1946)「作者の意図はいりませーん!」【反意図主義】
バルト「作者は死んだ」「テクストと戯れるのだ……」デリダ「そうだそうだ!」【ポストモダン】
ハーシュ(1967)「いや、意図も大事でしょ……」【意図主義リバイバル】
⚔90年代〜00年代の論争へ🏹
キャロル、イスミンジャー、ステッカー、リビングストンほか「ほどほどに作者の意図使っていきましょうや」【穏健な現実意図主義】
レヴィンソン、トルハースト、ネハマス、カリーほか「〈理想的鑑賞者によって仮説される意図〉ってのがいいぞ」【仮説意図主義】
デイヴィス「🙋♂<価値最大化!」
関連する邦語文献だと、レヴィンソンの仮説意図主義については『分析美学基本論文集』に論文が収録されており、穏健な現実意図主義については『批評について』のキャロルと『分析美学入門』のステッカーが擁護している。いちおう『分析美学入門』でもデイヴィスの立場は引かれているのだが、詳細に検討されているわけではないので原典をあたってみました。
「芸術作品の解釈において作者の意図は関与的なのか、関与的だとすればどのように/どの程度関わるのか」という話題にご関心の向きであれば、面白くためになる議論のはずです。ライバル理論についても頁割いて検討しているので、トピック全体のサーベイとしても◎です。*2
*補足の一部と感想コメントは注に回しています。ところどころ本文中にも補足を付けている&主張を噛み砕いているので、デイヴィスの正確な記述が気になる方はお気をつけください。/*中見出しも、僕のほうで適時付けています。/*その読みはおかしい、というご指摘は随時募集。
- 0.イントロダクション
- 0.1.文学解釈に関するみっつの理論
- 0.2.本論文の射程
- 0.3.本論文の目的と主な主張
- 1. 現実意図主義
- 1.1.極端な意図主義と穏健な意図主義
- 1.2.意図の実現に関するふたつの基準
- 1.3.どこまで「証拠」として使ってよいのか
- 1.4.現実意図主義では広すぎる
- 1.5.現実意図主義では狭すぎる
- 1.6.弱い現実意図主義
- 1.7.カテゴリー的意図
- 1.8.反意図主義と現実意図主義の対立点
- 1.9.現実意図主義への評価まとめ
- 2.仮説意図主義
- 2.1.現実の作者から引き剥がす
- 2.2.現実意図主義に対する仮説意図主義の利点
- 3.仮説意図主義と価値最大化理論
- 3.1.仮説意図主義も価値最大化をしている
- 3.2.仮説意図主義はどこまでちゃんとした意図主義なのか
- 4.価値最大化理論(および仮説意図主義)への反論
- 4.1.価値最大化理論では広すぎる?
- 4.2.価値最大化理論では狭すぎる?
- 4.3.価値最大化理論における解釈の多様性
- 5.まとめ
- 文献一覧
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