Maarten Steenhagen「画像のSenseとReference」(2020)

Steenhagen, Maarten (2020). Sense and Reference of Pictures. British Journal of Aesthetics:1-5.

 

つい先日BJAがオープンアクセスで公開した「描写の哲学」論文。

著者はスウェーデン、ウプサラ大学所属の哲学研究者みたいです。メガネがおしゃれ。短い論考ですが、大筋としては描写に関してフレーゲ「意味(reference)」「意義(sense)」を援用するJohn Hymanを攻撃する模様。

毎度ながらフレーゲの区別は定訳だと意味不明なので、以下では単に「reference」「sense」と表記します。

 

  • レジュメ
    • Hymanの見解
    • 筆者の見解
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「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか」|投稿論文あとがき|参照ミーム一覧

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論文が発表されました。最新号の『フィルカル』5(2)に載っています。

「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか:インターネットのミーム文化における画像使用を中心に」と題して、画像表象・描写の哲学を論じた論文です。年始に開催された「描写の哲学研究会」での発表がベースになっています。*1

以下、簡単な論文紹介と、論文中に添付できなかったミーム作品の一覧を載せました*2。実際に作品を見てみないことにはいまいち味気ないと思いますので、合わせてお楽しみください。

 

*1:発表資料はresearchmapからどうぞ。

*2:著作権的にグレーな作品たちをこの場で引用することもグレーなわけですが、インターネットは多かれ少なかれそういったグレーを許容していくしかないというのが私見です。もちろん、然るべき権利者から然るべき仕方で怒られた場合は、然るべき対応をいたします。

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レジュメ|「ビアズリーの美学」|スタンフォード哲学百科事典

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 本記事は、「スタンフォード哲学百科事典 Stanford Encyclopedia of Philosophy」収録「ビアズリーの美学[Beardsley's Aesthetics]」の意訳&抄訳である。

モンロー・ビアズリー(1915-1985)は20世紀英語圏を代表する美学者のひとりであり、分析美学においてはフランク・シブリー[Frank Sibley]と並ぶ巨人とみなされている。2005年のJAAC 63(2)号では「美学におけるビアズリーの遺産」としてシンポジウム特集が組まれているが、名だたる寄稿者たちが次のように紹介している。

もしビアズリーの『美学』が出版されていなければ、美学がなんであるのか私が理解することは決してなかっただろうと思う。出版に先立ち、私はすでに二年間も美学教員をしていたにもかかわらず、である。/ビアズリーの本の出版は、20世紀の分析美学において、最重要な出来事のひとつであった。(ジョージ・ディッキー[George Dickie])

ビアズリーの『美学』は、現代の分析芸術哲学にとって、根本的な貢献を果たした。(スティーヴン・デイヴィス[Stephen Davies])

ビアズリーは、その後の20世紀において花開く分析芸術哲学の草分けとなった栄誉に浴している(ニコラス・ウォルターシュトルフ[Nicholas Wolterstorff])

ビアズリーの主著である『美学』は、いまでも英語圏の美学教科書として使われるような大著である。分析美学という分野の紹介としては最優先の一冊だが、残念ながら和訳はまだない(いかんせん、原著600ページ超という大作だ)。*1

また、本文中でも言及されるが、ビアズリーの名がもっともよく知られているのは、文学批評におけるニュー・クリティシズムを牽引した論文「意図の誤謬」である*2。『美学』には「意図の誤謬」を発展させた議論も含まれており、文学研究・批評理論研究にとっても重要な文献だ。*3

ということでぜひ訳されてほしいので、本記事にはささやかなプロモーションとしての意図もある。ご検討いただけると幸いです。

 

  • 0.概要
  • 1.背景
  • 2.美学の本性
  • 3.芸術の存在論
  • 4.芸術の定義
  • 5.芸術家の意図
  • 6.内的なものと外的なもの
  • 参考文献

*1:絵画の表象に関わる第6章「視覚芸術における再現」だけは、『分析美学基本論文集』に収録されている。こちらも面白い。

*2:こちらは青の『フィルカル』2(1)号に訳があり、本稿の訳文もそちらからお借りした。

*3:余談だが、数年前に大学院の講義で読んだ思弁的実在論×批評理論の文献では、結論として「最も思弁的実在論的な批評とは、ニュー・クリティシズムだ」と言われていた。評価の是非はともかく、今日においても再考する価値のある運動だと言えよう。

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